ひねくれ者のくだらない話

特に深い意味はない。

夏発ち

 夏は憂鬱だ。

 気を保てない暑さ、セミの愛の発狂、腹のはち切れそうな憎たらしい蚊、毛の処理、脛の乾燥、保湿、鼻炎、エアコン風邪と頭痛、ゲリラ豪雨、運動会、日焼け止め、戦争、はしゃぐ子供とヤンキー、よく見たら気持ち悪い蛍、朝の清々しさ、制服、クーラーの効いた部屋、風呂上がりのドライヤー後の汗、バテて薄っぺらいことしか言えないテレビのリポーター、のりみたいに張り付く前髪、はんかち、冷凍庫、台風、3秒で溶けるアイス、庭での焼肉、湿気で飛び跳ねるアホ毛、陽炎、夏休み明けのプール、花火の歌、目を細めて見る海の波、緑深まる山、狂い生える雑草、薄れゆく星、沈まぬ太陽、帰り道、グラウンドの小さな砂、コンクリから照り返される熱、役立たずの制汗剤、ポカリスエットの後味。憂鬱リスト。

 

 完全に高校に行かなくなってしまったのも夏だった。高一の夏、病気のせいで全てを諦めた。

 友達はそこそこいたし、勉強こそ中の中だったが、「私は学校が嫌いだ」と思い込むことにして、くだらない夢想の末から生まれた罪悪感を念入りに払拭し、潔く引きこもった。

 

 ただひたすらに自分が「不幸」ということで特別になろうとするのを夏だけは全部見透かす。その熱で溶かすように、湿っぽく、ゆっくりじわじわと化けの皮を剥がしてゆく。

 

 怠惰は気持ちが良い。激しく落ち込むと気持ちが良い。誰かになろうとすると、消えてなくなりそうで、とても気持ちが良い。

 しかしその誰かに近付こうとすればする程、世間からは拒絶されているように感じてしまう。仕方なく剥がれた皮をのそのそ被りなおす。

 

 私は夏の終わりに死にたかった。いつも夏の終わりに死ぬことを夢見て生きていた。

 音楽と共に死ぬか小説と共に死ぬか映画と共に死ぬか…けれども、毎年夏をいつの間にか程なく通り越し、また忘れた頃に夏が来る。夏は逃げ足が早い。

 

 バイクに乗ればどこにでも行けると思った。この風に乗せられて、誰も知らないような場所へ行ける気がした。

 そうやって去年の夏は、毎日のように原付であてもなく走っていた。

 しかし、どこへ行けども全て同じだった。

 海に行っても山に行っても結局自分が自分である限り、私の望むその境地には辿り着けないのだろう。  

 原付は案外乗り心地が悪い。持ち前の反り腰と尻の限界を感じ、一日でたったの往復40kmも走ったことはなかったと思う。

 所詮その程度。

 

おいしいよ↓

 

茄子の煮びたし 】

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材料

  • 茄子                 3本
  • 小ネギ             お好み
  • ごま油             大さじ2
  • しょうゆ          大さじ3 ☆
  • みりん              大さじ3 ☆
  • 砂糖                 小さじ1  ☆
  • だし汁             200ml     ☆
  • 生姜チューブ  1〜2cm   ☆

 

作り方

  1. 茄子を洗ってヘタを取り、二口大くらいに分け、かくし包丁を入れる。2分程度水に晒す。
  2. キッチンペーパーで水気を拭き取り、油を ひいたフライパンに皮から並べる。(中火)
  3. しなってきたら返して残りの2面を軽く焼く。
  4. ☆を加え、3〜4分煮る。
  5. 火を止めて容器に移し、小ネギを散らす。粗熱がとれたら冷蔵庫で2〜3時間おく。

 

 まるで肉。夏バテしててもバクバク食べられる。

 さっぱりプリプリじゅわー。

 

 

 夏が終わった。通勤・通学ラッシュ後の静けさの中、駅前のミスド

 

 ミルクを付け忘れたブラックコーヒーと、ほのかにカメムシのにおいのするお冷を、どちらが口直しなのかわからずも交互に飲みながら、今年の夏を振り返る。

 正直なところ、コロナの印象が強すぎてよく覚えていない。

 

 ただ1つ、絶対に逃れられない受験という問題を除いては、嫌なことは何も無かったように思える。少なくとも、去年よりは穏やかだったはずだと一息つく。

 この夏を逃げきったような快感は、ポンデリングの甘ったるいシロップと丸々した愛らしいフォルムより、魅力的だと思う。

 

 消えたがり死にたがりの夏レースから、私はきっと降りることができる。と確信してしまうと、人間の構造上うまい具合に進まないので、少しばかりの憂鬱を土産に貰っておこう。