ひねくれ者のくだらない話

特に深い意味はない。

ひとりごつ

 特に何か食べたいものもなく食券機の前で指を上下左右に往復させた。カツ丼にもハンバーグにも魚にも野菜にも低糖質にも何もそそられるものが無い。全く全て色のないように思える。

 トイレが汚いだとか水がまずいだとか、今にもエプロンを脱ぎ捨て辞めていきそうな店員の愛想の悪さだとか、サラダのゴマドレが多すぎだとか、ナポリタンが脂ぎっているだとか、みそ汁の具がわかめしかないだとか、そんなことを、深く沈んでいくものをわざわざ崖の縁から掴みかかってまで拾い上げるほどの余裕はない。お箸でポテトを掴むという行為に少しの違和感を覚えながらもはりぼての外面でかわし、ただぼーっと口に運ぶだけの機械と化す。

 つまんで、ねじこむ。つまんで、ねじこむ。しなしなのポテト、ガチガチのポテト、入口でつっかえたり頬に刺さったりもうなんだっていい。

 大阪で通っていたやよい軒、元彼と朝定食を何度も食べたやよい軒、もう来ることはないだろう。

 生理前の憂鬱だとか元彼にブロックされたとか全部忘れたくて1個1個消して浮かんだらまた消しての繰り返しだ。こんなにも不器用なせいでポテトを運ぶ機械になりきってもなりきれない。

 バス内に照らされた座席の影だとか移り変わるようにして揺れ動く外の葉の影だとかにいちいちノスタルジーを感じていて本当にキリがない。そのうち運転士の浅黒く渦巻く腕毛にでさえも何かエモーショナルな気持ちを掻き立てられるようになるのだろう。

 メイクした顔よりすっぴんがいいだとか、なんでこんな奴と私は会話しないといけないのだろうか。

 電車の窓に貼られた「UV96」ほど信用できないものはない。体感だと55くらいだ。