ひねくれ者のくだらない話

特に深い意味はない。

にん じん

 私は一日に最低一食は自炊をする。お嫁に行けないくらいの頻度とクオリティで。

 特にそうしようと意識している訳ではないが幸薄生まれ薄味育ち、外食やコンビニ弁当がしょっぱくてしょっぱくてしょうがないので面倒だがキッチンに立つ。

 

 料理をするためには当然レシピがある。その材料の中で一番厄介なのが「にんじん」だと私は思う。

 大抵のスーパーでは1袋3個入りで売られていて、せいぜい3日の命だと考えると1〜2人前を作るにしてはやや多い。

 カレー、シチュー、豚汁、皿うどん、肉じゃが、ナムル、、、あんまり思いつかなかったけどまあとにかく自炊する上で私の壁はこの「にんじん」なのだ。

 「にんじん 1/2本」

これやめろ。

 単純にレシピを2倍にすれば、

「にんじん 1本」

と気持ちよく使い切ることができる。

 しかしそんな毎日いっぱいにんじん食べたいだろうか?私は食べたくない。

 にんじんは火が通りにくいし米とそんなに合わない。持論だけど。

 仮に、にんじんをダイレクトに感じる、にんじんが主役の主菜があるとして、誰がホカホカの白米とのマリアージュを感じるだろうか?

 例えば肉じゃがは名の通り「肉」と「じゃがいも」、カレーは「ルウ」によって米が進むのだ。にんじんの入る隙は無い。もはやにんじんは色彩担当だと言っても怒られないと思う。

 

 かといって私はにんじんが嫌いなわけではない。

実を言うと何もつけずに生でそのまま齧るのが一番好きな食べ方だ。

 噛む度にんじんの甘味と瑞々しさが口いっぱいに広がり、コリコリと軽快な音を鳴らすのが楽しい。なんとなくにんじん農家さんが喜びそうな食べ方で自己満足的に好き。

 

 直射日光の当たらない風通しの良い場所で刻一刻とおばあちゃんの手の甲みたく柔くなっていくにんじん。寂しそうなにんじんを見つけた。

 二口コンロをフル稼働させ背中ら辺についている第三の目で注意しつつゴミ袋の上でチャカチャカとピーラーを当てる。

 するりと一皮剥けて滑らかになった3本目のにんじんがオレンジ色を滴らせながら手の中にいた。